内部通報者の実名を会社側に伝えた弁護士が戒告処分

 今年3月 内部告発者の実名を会社側に伝えたのは、秘密保持義務に反し、弁護士の品位を失う非行にあたるとして、第2東京弁護士会が、自動車販売会社の外部通報窓口担当の男性弁護士を、戒告の懲戒処分にした、と報道されました。

【事案の経緯】
社員Aは06年、外部通報先の弁護士に電話で不正を告発したところ、翌日、会社から10日間の自宅待機を命じられた。

虚偽申告などを排除するため、通報は実名で受け付け、会社側には匿名で通知する仕組みだが、弁護士Bは「社員Aが『もみ消されると困る』と希望した」とし、実名を会社側に伝えた。一方、社員Aは「希望した事実はない」と否定していた。

第二東京弁護士会の懲戒委員会の審査に先立ち、綱紀委員会は昨年1月、社員Aが実名通知を承諾した事実は認められないと判断し、弁護士Bを「懲戒相当」と議決した。

これに対し、懲戒委員会は、社員Aが自宅待機を命じられた後、弁護士Bに抗議をしていない点などを挙げ、「社員は承諾していた」と、綱紀委員会とは逆の判断を示した。

しかし、承諾に際して弁護士Bが、実名通知で起こりうる不利益を、社員Aに具体的に説明していないことなどから、

「社員が自発的な意思で、会社に実名を通知して不正を調査するよう求めた承諾とは認められない」と判断、弁護士は「秘密保持義務に違反している」

と結論付けました。

【外部窓口と実名報告】
今回の事案は、言った、言わないがベースとなっていますが、上記第二東京弁護士会の処分は、「社員は承諾したが、真意の承諾ではなかった。弁護士Bは実名を通知した際に起こりうる不利益取扱について説明不足であった。」との考えにもとづいて下されています。

果たして、外部窓口(弁護士に限らず)が、通報者から、実名を通知することに対して「真意の承諾」を得ることなどできるのでしょうか。

実務から考えると甚だ疑問です。

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