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コンプライアンス経営のための内部通報積極活用の重要性

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このような社会背景の激変の中で,内部告発者の解雇・不利益取扱い等を禁止してその保護を図ると共に,社会経済の健全な発展を図る必要性はいよいよ高まり,公益通報者保護法が導入された訳ですが,この法律はあくまで公益通報者を保護するに留まる消極的な立法であり,それ以上に企業にコンプライアンスの高いハードルを課そうとするものではありません。しかしながら,企業がコンプライアンス経営を維持するためには,自ら不正を早期に発見して自浄作用を発揮することが重要であり,そのための端緒として内部通報を積極活用する姿勢が求められることになります。すなわち,コンプライアンス経営のためには,内部通報を消極的に受け止めるばかりでは不十分であり,それを積極的に活用する姿勢が必要なのです。

 昨今,上場企業を中心に企業における内部通報制度の導入が一般的となっていますが,それが遵法らしさの隠れ蓑になっている企業は残念ながら少なくありません。内部通報制度を導入したことの一事をもって,コンプライアンスが達成されているかに対外発表を行う企業において,実は内部通報が過去に1件もなく,社員が通報の仕方を知らないケースも間々あります。これでは本末転倒であることは明白です。「仏作って魂入れず」にならないよう,本気のコンプライアンス経営が求められるところです。
(続く)

社会背景の激変と告発の時代の到来

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近年,消費者側の権利意識の高まりは顕著であり,不祥事を起こした企業への消費者からの批判が強まる中,公益や社会的責任への配慮と共にコンプライアンスは企業経営において重要性を増してきました。その確立に向けた取り組みは,バブル経済崩壊後の外資の台頭とこれに伴う経営のグローバルスタンダード化を背景にさらに加速しています。経営環境が厳しさを増す中,終身雇用制度の崩壊の一方で導入例の目立つ能力主義人事は,社員に自身のキャリアを損なわせかねない違法業務を明確に忌避させるところとなりました。こうして,遂に内部告発の時代が到来するに至ったのです。

 こうした時代背景の下,企業側のリスクコントロール上も,不祥事の隠蔽によるリスクは極大化しています。従前と異なり,隠蔽した不祥事が発覚する確立は飛躍的に高まり,同時にその発覚による損失もまた従前とは比較にならない程度に至っています。近時の不二家や船場吉兆の事例を観ても,不祥事の隠蔽がもたらす損失の大きさは測り知ることができようというものです。今や効率経営を達成するには,遵法経営を推進することが不可欠の時代となりました。違法行為による収益は,決して長期的に企業の健全な発展を支えることにはならない時代となったのです。
(続く)

企業不祥事発生・隠蔽のメカニズムとは?

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 近時,食品の偽装表示事件や自動車のリコール隠し事件など,事業者内部の従業者等からの通報を契機として企業不祥事が明らかになる事例が相次いでいます。主なところを挙げると次のような状況です。

  • 三菱自動車㈱リコール隠蔽事件(2000.8)~30年に渡りリコールの事実を隠蔽し続けた。運輸省(当時)への匿名電話により発覚。

  • 雪印食品㈱牛肉原産地偽装表示事件(2002.1)~豪州産牛肉13.8トンを国産と偽って業界団体に買い取らせた。倉庫業者の告発により発覚。

  • 日本ハム子会社の日本フード㈱詐欺事件(2002.9)~BSE(牛海綿状脳症,いわゆる狂牛病)対策の国産牛肉買い上げ事業に虚偽申請し,代金の一部を詐取した。近畿農政局に対する内部者からの電子メールにより発覚。

  • 東京電力㈱試験データ不正操作事件(2002.10)~福島第1原発1号機で原子炉格納容器の気密試験データが不正に操作されていた。通産省(当時)への内部告発により発覚。

  • ㈱不二家賞味期限改ざん事件(2007.1)~同社のプリン,シュークリームに消費期限切れの牛乳を使用して社内規定より1~2日後の日を消費期限と表示して販売した。社内調査で判明していたが,隠蔽が指示された。マスコミへの内部告発により発覚。

  • 石屋製菓㈱賞味期限改ざん事件(2007.8)~同社のヒット商品「白い恋人」の賞味期限を改ざんして本来の期限後も販売を継続していた。保健所への従業員を名乗る者からの電話により発覚。

  • ㈱赤福賞味期限改ざん事件(2007.10)~「赤福餅」の出荷戻り分を冷凍の上,包装し直して再出荷していた。保健所への内部告発により発覚。

  • ㈱船場吉兆食品表示偽装事件(2007.10)~賞味期限切れ菓子の販売の他,牛肉,鶏肉等の原産地,原材料を偽装表示して加工,販売していた。菓子販売に関する保健所への告発により発覚。

 数々の企業不祥事には,不祥事を顧みない徹底的な利益追求の姿勢が顕著に観られるところです。高度経済成長時代においては,公害を引き起こしても利益を上げようとする営利優先主義が企業側にあり,生涯雇用制度の下での企業防衛の意識も高く,公益・企業の社会的責任は軽視されていました。消費者側の権利意識は低く,保護制度も不十分な状況のため,消費者は泣き寝入りを強いられることも多く,不祥事を起こした企業への社会的批判も弱かったといえるでしょう。不祥事の社内隠蔽は容易であり,それが発覚したときの損失もそれほど大きくはないため,リスクコントロール上も不祥事は隠蔽した方が得という時代だったといえます。
(続く)

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